【読了】『物語のおわり』湊かなえ
ずいぶん間が開いてしまいました。
自分の思いや考えを文章にするのって、ある程度自分に向き合うことが必要。
余裕がないとできないなと思います。
それだけ自分の頭の中にあることをおざなりにしてしまっているということなので、考えものです。
もう少し心の余裕をもって生きたいな。
『物語のおわり』
ふと手に取って読んでみました。
短編集かと勘違いして手に取りましたが、違うのか!なるほど!と気づいたときには少しテンションがあがりました。
==========以下、ネタバレあります==========
そこでそう繋がっているのか!と気づいたときに、
あれ?この話はたしかどこかで…?と気になったときに、
ぱらぱらとめくって遡ることができるのが紙の本の良さだなと思います。
どこかで、「残りどのくらいっていうのが手に持つその薄さで感じられる」それもまた紙の本の良さだと聞いたことがあるけれど、それもまた同感。
あれ?あれ???って、何度もぱらぱらと遡って、
左手に感じる紙の薄さがいったりきたりしながら、
時間をかけつつあっという間に読みました。
「過去へ未来へ」
智子の話で出てくる萌ちゃんがなんとなく気になって、
「いとこのお姉ちゃん」の存在がなんとなく気になって、
そうかぁ…
萌ちゃんはあなただったのね。
いとこのお姉ちゃん、あなただったのね…!!
絵美の物語が、旅の中で次々と旅人たちの手に渡り、
みんなが絵美のその後を予想するけれど…
私は、恵美はハムさんに連れ戻され、夢を諦めたものだと思っていた。
むしろそれ以外の予想がまったく思い浮かばなかった。
私の感じたハムさん像は、
優しいけれどやっぱりそのあたりの理解はない気がした。
時代的なものもあるだろうし。
絵美が父親に蹴り飛ばされるシーンとかね。
だからハムさんも、絵美に手をあげることはないにしても、
やっぱり絵美に夢を追うことを許すタイプにはとても思えなかったし、
絵美だって、心の中に夢へ向かう炎があったとしても、
家族に黙って駅までたどり着いたとしても、
実際のハムさんを目の前に、それを振り切って東京に迎えるとは思えなかった。
まさか、そんなことがあったなんて。
とても予想外だった。
でも知り合いを頼るんではなく、本当に松木流星の弟子になっていたとしたら…
絵美にはどんな未来が待っていたんだろうな。
ハムさんから花にたとえるならすずらんと言われて恥じらっていた絵美が、
すずらんを使った殺人トリックを思いつくなんて、
絵美の心の中には、ハムさんの手中におさまらない絵美だっていたんじゃないかと思う。
萌も感じていたけれど、
絵美たちの世代、どれほどに自分の思いを押し込めて親に従って生きた女性がいたんだろう。
男性も女性も、自分の自由に、自分の夢を追って生きられる時代ではなかったとは思うけれど…
そう思うと、
今の自分の持つ自由を大切にしないといけない気がするし、
これから先の子どもたちに、今の私たちの「自由」を、不自由だと感じてしまうくらいの自由がある、そんなふうになるといいなと思う。
絵美の物語を、それぞれの旅人たちが要約している部分もおもしろかったな。
見る人によって、物語というのはいくらでも変わるんだろうな。