【読了】『Nのために』湊かなえ

久しぶりに読みたくなった湊かなえさん第二段は『Nのために』

こちらも過去2014年にドラマ化された小説。

これもドラマ自体は見ていないのだけれど、ビジュアルが『夜行観覧車』と雰囲気が似ている印象でした。

 

湊かなえさんの小説は「イヤミス」なのが特徴だけれども、

この作品は、後味が悪いというよりもなんだかものすごく切ない気持ちになりました。

後味がいいのかと言われるとよくはないんだけど笑

 

ドラマ版は榮倉奈々ちゃんか。

小説版の杉下希美は小柄とあるしそのへんはちょっと印象が違うけど、榮倉奈々ちゃんもはまりそうだなぁ。

安藤、成瀬、西崎の3人はちょっと見てみないと分からないな、という感じがしたけど…野口夫妻のチュートリアル・徳井さんと小西真奈美さんに、見てもないのに納得です。

 

こういう、昔のドラマを掘り起こすのも楽しいです。

 

==========以下、ネタバレあります==========

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとも残酷なのが希美の家庭環境。

とにかく父親と愛人が憎たらしい。

よく分からない理屈で妻子を捨てるところからして理解のできない残酷さがあるけれど、まあまあ、母親について「何もできないのに贅沢」という描写があるし(しかもだいぶ真実味がある)嫌気が差したのだろうというところまでは分かる。

でもそれなら自分が出て行けばいいのに追い出すなんて。

妻の両親が建てた家に住み続けることが、妻の家に婿養子に入ってからたくさんあったであろう鬱憤を晴らすことになったのかしら…。

 

だけど洋介を階段から突き落としたり殴ったり、だいぶ狂ってる。

そんなに我が子に愛情が持てないのだろうか…その後の様子を見るに、希美も洋介もいい子だよなぁ…

 

愛人の女も残酷が過ぎる。

そもそも不倫をして平気な顔で相手の家族に顔を見せられる時点でちょっとどうかあるとは思うのだけれど、高校生の女の子に毎日毎日土下座をさせて食事を分け与えるなんてなんて悪趣味なのだ。

 

この二人が物語のその後どうなったのか描かれてはいないけれど、

数年たって50を過ぎてもぴんぴんしている自分に気が付いたとき、父親はどんな気持ちだったのだろう。

狭い島なのだから、誰が語らなくとも家族の崩壊と父親の奇行など島中に知れ渡っているはず。

いくら鬱憤がたまっていても、数年好きに暮らして当初の予定の50歳を過ぎてしまえば、家族が恋しいとかそんな気持ちにはなれなくても、そこからさらに数年たって娘が不治の病だと知ったら…?

 

「弟から病気のことが伝わってしまい」とあるので、希美は父親に連絡を取っていなかった。あれだけのことがあって洋介が父親と連絡を取り合う仲になるかというとそうは思えない。

そのときに病院の手配をした父親は、どんな思いだったんだろうな。

 

 

人を愛することができなくなったまま、「海が見える白いお城のような病室」で最期の時を過ごす希美。

自分の犯した罪ではないものまで自分のものとし、過去から解放されようとした西崎。

2人は今、救われたんだろうか。

 

希美のおかげなのか事件のおかげなのか、結局僻地には行かずにすんだ安藤は、知らないことがたくさんあって、巻き込まれたかったと思っていて。

野原のおじいちゃんとはじめてたくさん言葉を交わす場面から、トリに思いを馳せる安藤が切ない。

 

はっきり語られてはいないけど、故郷の海近くにレストランを開いた成瀬は、過去から逃れられたんだろうか。

 

 

Nって誰なんだろう。もしかしたら、野原のおじいちゃんかも。

できることなら野バラ荘で、みんなでおいしい料理をほおばってほしい。